hiroさん2

ワークグループに加入

 勉強の項目と仕事の項目が交互に出てくるhiroさんの年表は、印刷会社との別れによって新しい記事が出てくる。

 

2004. 9 印刷所移転のため入力業務終了
2004   Word2002 上級、Excel2002 上級講座受講
2004.11 MOS Word2002 EXPERT 合格
2004.11 福岡テープ起こしネットに加入
    (2005.5 Work Group Contrailにグループ名を変更)

 

 つまり、hiroさんは印刷会社の仕事が減ってきたことによって、別の仕事先を見つける必要が出てきた。しかし編集専用機の時代は終わっている。そこでパソコン教室でパソコンを習うことにしたわけだ。2004年以前からパソコンは持っていたし使っていたが、どんなことでも一度きちんと習うというのは、hiroさんのポリシーであるらしい。

 

 MOSはMicrosoft Office Specialist。同じソフトでもバージョンが違えば中身も違うというマイクロソフトの考え方で、バージョンごとの資格になっている。
 hiroさんがWord2002上級とExcel2002上級の講座を受講しているうちに、やっぱりというか印刷所は最終的に遠方へ移転してしまった。

 

 11月、まずはWord2002 EXPERTを受けて、受かった。
 ところがちょうどワークグループを見つけて加入したので、仕事が忙しくなり、結局Excel2002 EXPERTの試験は受ける余裕がなかったという。季節を見れば冬直前、またも業界全体で忙しくなる時期に突入だから無理もない。
 それにhiroさんは、資格を「履歴書の飾り」的に考えてはいない。あくまで実務をこなすための技能習得が目的であり、仕事に結びつけばそれ以上は基本的に必要ない。

 

 このワークグループは地元のグループで、インターネットで探したのだという。たちまち空中分解するグループが多い中、今でもちゃんと活動を続けている。リーダーが受注する仕事がメインだが、メンバーそれぞれが受注した仕事を助け合って作業することもある。

 

違うジャンルの仕事が増えたら

 hiroさんが地元で見つけて加入したワークグループは、データ入力系(いわゆるテキスト入力と狭義のデータ入力とを含む)よりも、テープ起こしに比重を置いて受注していた。
 そこでhiroさんは例によって、ただちにテープ起こしを学ぶことにした。

 

2005.1~6 オンライン講座テープ起こしコースを受講

 

 谷頭千澄さんが講師をしていた講座だ。この講座は半年という十分な期間をかけて、単なるテープ起こしの技術だけではなく、メールの書き方や在宅ワーカーとしての心構えなど幅広く学べるようになっていた。「あなたの強みと弱みを書き出してみよう」というカウンセリング的内容まで入っているという、素晴らしい講座だった。
 グループの仕事が多くなり、結局hiroさんはこの講座の勉強に十分な時間が取れなかった。それでも、この講座でファイルの圧縮・解凍を初めて体験するなど、役立ったこともいろいろあったという。

 

 ところが皮肉なもので、せっかくグループのためにとテープ起こしを勉強し始めたのに、このときグループに増えていた仕事はデータ入力系だった。
 そこで…、はい皆さん、もうhiroさんの考え方は理解されていますね。そう、忙しい毎日にもかかわらず、hiroさんは今度はデータ入力を勉強することにしたのであります。
 6月にテープ起こしコースが終わって、7月から私のデータ入力コースを受講。hiroさんの学びに終わりはない…。

 

データ入力とテープ起こしのはざま

 本来テープ起こし中心のグループだったのに、2005年前後の一時期はデータ入力系の仕事が増えた。そして2008年現在はまた、テープ起こし中心に戻りつつある。
 hiroさんが所属しているグループの試行錯誤やリーダーの苦労、メンバーの揺れなどが、私には想像できる気がする。

 

 そもそも、在宅でできる仕事はたくさんある。その中で在宅ワークとは、パソコンやインターネットを駆使してする仕事を指すが、それだっていくらでも種類はある。
 でも、全然経験のない人が、ちょっと勉強したぐらいでデザイナーやプログラマーになるのは難しい。なんとか物になる可能性があるのは、やっぱりデータ入力系、テープ起こし、ある種のライターぐらいなのだ(どれも私の仕事なのがちょっと悲しいが)。

 

 この3種類の中ではデータ入力系の人気が高い。一番簡単そうに見えるからだ。就業体験セミナーでも、データ入力の参加者が最も多い。
 そのくせ人材不足なのもデータ入力だ。
 簡単そうというイメージが悪影響を及ぼす。発注側は、簡単な作業に思えるので安い単価をつける。受注側も、簡単に思えるのでつい安くても受注してしまう。ところが、納得して受注した本人も、数回やると嫌気がさしてくるので、レベルの高い人材が育ちにくい。

 

 hiroさんが所属しているワークグループは、長続きしていることからしてもしっかりしたリーダーさんなのだろう。hiroさんのような熟練の入力者もいるし、他のメンバーも同様なのだと思う。
 だから、テープ起こしの合間にたまたま受注したデータ入力も精度がよく、発注者は喜んで次々頼んできたのだろう。
 けれども、データ入力系の単価はやはり安い。受注しても手を挙げるメンバーが減る。引き受ける一部のメンバーに過度の負担がかかる。それでまた軌道修正して、テープ起こし中心に戻そうとしている…。

 

 hiroさんからちょっと伺った話からも、私の一般的な見聞からも、たぶんそういう流れなのだろうと思う。

 

納期は特に決めない

 私は最近まで、hiroさんにはデータ入力系(ベタ入力などを含む)のみをお願いしていた。データ入力系とテープ起こし系の人を区別する方が、違う種類の仕事が重なったとき自分にとって分かりやすかったからだ。このところ、データ入力系の仕事が減っているので、この原則は崩れつつあるけれども。

 

 hiroさんは仕事が速い。納期をわざわざ指定する必要もないほど、すぐ納品されてくる。
 入力自体も速いのだろうけど、それ以外の要素もあって速いのだろうと思う。仕事全体の進め方の緻密さ、丁寧さをいつも感じる。例えば、最初から正確に入力しておけば、校正後のデータ修正は短時間で済む。
 hiroさんのお子さんは高校生と大学生(この春就職)で、ご主人は単身赴任。お子さんが大きいことも、仕事に集中できるという意味で有利だ。

 

 以前メールで、hiroさんに速さの秘訣を尋ねたことがある。「速くない、ただ長時間パソコンの前にいるだけ」というような返事だった。昨年7月号の文月さんインタビューで、文月さんも同じようなことをおっしゃっていた。好きだから長時間やっても苦にならない。これは長続きする入力者に共通している。

 

狭い画面も効率は悪くない

 hiroさんにお願いしているアンケート入力の仕事は、原稿をPDFにして送っている。ノートパソコンの狭い画面では、見にくいのではないだろうか。PDFを出力して使っているのかと質問したら、画面内でやっているのだという。

 

 画面の左側にPDFを開き、出来るだけ大きく原稿を表示させる。私のデスクトップの19インチモニタでは、A4判の原稿は68.6%表示になる。ということは、hiroさんの14インチ画面だともっと小さく表示されるわけだ。
 そして、画面の右側にエクセルを開く。高さはエクセルシートの数行分。幅はPDFにかからない程度。横幅が狭い分ひんぱんにスクロールするので、入力するところがいつも真ん中にある。だからかえって入力しやすいというのがhiroさんの説明。
 紙の原稿だと、エクセルとの目の移動距離が大きくなって能率が悪いから、小さくても両方画面内に表示させる方が能率がいい。なるほどー。

 

 hiroさん、実はパソコンの扱いは好きではないらしい。
 昨年、ノートパソコンが不調になって新しく購入したら、古い方が「何か感じたらしく」快調に動くようになり、結局現在でも新しい方は使っていない。たしかに機械って、見捨てられる運命を感じると必死に働き出すときがあるような…。
 そういえば、昨年6月のザイニュー新宿オフに遠路来てくださったとき、「新しいノートパソコンを買ったけど、設定が面倒でまだ使ってない」とのことだった。それから1年、ようやく一応の設定はしたが、画面が明るくてなじめないのだそうだ(もちろん画面も暗めに設定したそうだけど)。

 

hiroさんのコメント
 今のパソコンは、XPが出たときに買った物で、また最近不調になりつつあります。Vistaは不評だけど(自分にとっても使いにくいけど)、そろそろ限界でしょうか? 悲しいけど壊れる前には移さなくては…。

 

 昨年7月号の文月さんといい、このhiroさんといい、道具にこだわらない達人に遭遇してしまうと複雑な心境。セミナーで「パソコンのメンテナンス能力は入力能力と同じぐらい大事」「画面は大きい方が楽」「料理人の包丁と同じと考えて、キーボードはいいものを選びましょう」なんて言っている自分が不安になったりもする。
 一般論として、自分でパソコンの設定やメンテナンスのできる能力が在宅ワーカーに必要なのは確かだし、hiroさんだって面倒とか言いながらちゃんと自力でやっているわけだけど。

 

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