私の仕事探し(連載第6回) タウンページてんやわんや

前号から、「私の仕事探し」と「全入力者基礎講座」が合体したような内容になってしまっている…。駆け出しの頃、というか入力者を志して挫折した当時の話は、今となっては思い出話にしかならないが、話題が現在に近づくにつれ、実際にうまくいった例をご紹介できるようになってくる

美しすぎるサイトの印刷会社は対象外

私が最初に在宅入力者を志した1995年頃は、まだインターネットで検索する…などという先進的な技術は普及していませんでした。ですから、営業といえば、電話するにしろDMを出すにしろ、電話帳(タウンページ)で売り込み先を見つけるのが普通だったのではないかと思います。
 地元の印刷屋さんは入力者が売り込むべき企業の代表です。
 印刷会社は、職業柄デザイナーその他に知り合いがいるわけで、大手の会社になるとものすごく複雑そうなデザインの、やたら美しいウェブサイトを作っています。私たちが売り込むべきは、そういうところではありません。
 インターネットなんてよその世界だと思っているような、地元の小さな印刷屋さんです。そういうところは自前のサイトを持っていないので、いくらネット検索しても当然引っかかりません。けれども、必ずタウンページには載せています。

なぜか印刷会社からテープ起こしが

「でも印刷屋さんからもらえる仕事は、ベタ入力かレイアウトでしょ? 私はテープ起こしがやりたいんだけど」
 ご心配なく。私は印刷会社からテープ起こしの仕事をもらっている人を、複数知っています。どうしてそうなるのかは簡単です。
 地元の印刷屋さんは地域密着型。役所にも出入りするし、学校にも文集その他で出入りしています。公民館、地元の大きめの企業、とにかくその土地の拠点になる場所に出入りしているわけです。
 役所、学校、公民館、企業その他が講演会や会議をします。終わったあとは講演録や議事録を作りたい。その印刷は、どうせその印刷会社に頼むわけです。ついでに「テープ起こしをする人、あんたのところにいない?」と聞くことになるのは、成り行き上当然です。
 発注側も印刷屋さんも、テープ起こしの実務について通暁しているわけではありません。手取り足取りの指導は望めませんから、自力で勉強してやっていけるかたにお勧めの売り込み先です。また、テープの仕事だけがたくさんあるわけでもないでしょうから、紙の原稿を入力する仕事も並行してやりたい人向きです。
 もちろん、テープ起こしには興味がない、紙の原稿を入力したいというかたに印刷会社がお勧めなのは言うまでもありません。

印刷を発注するのは誰?

「印刷会社に仕事を出しているところ」に直接当たってみる、というのが第2の売り込み方法です。学校に直接売り込むというのはあまり聞きませんが、役所は個人にも仕事を発注することがあります。
 印刷会社からもらうと、当然、印刷会社がマージンをとりますから、その上の企業から直接もらったほうが単価がいいかもしれません。これも、技術的な指導は望めないので、自分で技術を身につけられる人向きです。

オフィス廿も載せるなら「タイプ印書」かも

指導もしてくれそうなところを、私もかつて、印刷会社と並行して探したものでした。これは難題でした。タウンページのどの項目に掲載されているのか、見当がつかなかったのです。
 最初、“ワープロ入力”という言葉で調べてみました。それに該当する項目は『ワープロ文書作成→タイプ印書』のようです。タ、タイプ印書…。時代がかった言葉だ…。といっても、ザイニューの会員さんには和文タイプや英文タイプの経験のあるかたがかなりいらっしゃいます。タイプが古いのではなく、その後の技術の進歩が速すぎるのです。
“タイプ印書”のページを開くと、いくつか入力業者らしい屋号が載っていました。(有)とか(株)とかついてないところをみると、会社組織になっていない、個人業者のようです。
 こういう小さいところは、忙しいときだけ手伝ってくれる人を求めてたりするので、聞いてみるのもいいかもしれません。めったに募集広告は出さないと思います。その受付や面接に時間を取られると本業にさしつかえる規模でしょうから。
 ちなみに、オフィス廿はタウンページには載せておりません。これは、第5号に書いた通り、私の住んでいるところが居住専用マンションのため、おおっぴらに営業しにくいせいです。ご了承ください。
 次は『ワードプロセッサー』という項目を見てみました。『タイプ印書』より多く載っていますが、“ワープロ販売業”“ワープロ教室”“ワープロ入力業者”らしき名前がごちゃまぜです。そのうちのどれなのかわからない名前もかなりあり、連絡してみるのも勇気がいりそうです。

情報処理サービスはコマンドの世界?

“パソコン”がつく項目は…?『パソコンショップ』と『パソコン通信サービス』。どちらも仕事はくれそうにありません。
“コンピュータ”は? ここには『パソコンショップ』や『コンピュータ学校』の次に『コンピュータサービス→情報処理サービス』という項目があります。今度は約1ページ分いっぱいに名前が載っていました。ほとんど(有)か(株)のマークがついています。ある程度以上の規模のところなのでしょう。私がパートしていたT社もここに載っています。
 そういえば、社内勤務だった間、入力をしたい人からの売り込みの電話や手紙が来たことはなかったと思います。募集広告に対する応募か、あるいは在宅さんが友だちを紹介してくるか、という2通りの入り方でした。
 私が以前DMを出し、仕事をもらった印刷A社では、ときどき売り込みがあるとのことでした。印刷屋さんだとなんとなく安心だけど、“情報処理サービス”と聞くとなんだかむずかしそう、敷居が高そう、会社対会社のつきあいだけで、個人、まして主婦なんて相手にしてくれなそう…という感じでしょうか。本当に小むずかしいことをやっている会社もあれば、実はアンケート入力などを人海戦術でやっている会社もあるのでしょうけどね。
 この欄には、T社の重要なお得意先である、マーケティングリサーチの会社も載っています。仕事を出す方と受ける方が同じ業種なのです。その会社もアルバイトのオペレータさんが社内でせっせと打っていますし、在宅さんもいるようです。ただ、各部署がそれぞれ人を使っているようなので、代表電話にかけてみてもうまくいかないかもしれません。DMを出しても全部の部署に回覧してくれるわけではないでしょうし、大きいところに売り込むむずかしさだと思います。

パソコンスクールで涙の修業(よそは違うかもしれませんが…)

パソコンスクールなら打てる人がいるに違いない、と仕事を持ち込む人あるいは会社はあるようです。ただ、スクールが営業して仕事を取ってくるのか、たまたま持ち込まれるのを生徒に分けているのか、私は知りません。
 あとで仕事をもらおうというコンタンでスクールに入るのが得策かどうかは、ビミョウです。スクールでパソコンを習い、そこから仕事をもらっていた人の話を聞きましたが、急ぎの仕事、小さな仕事が多くて、1日に2回出向くのはザラだったということです。驚くほど単価が安くて、支払いは3カ月後だったか4カ月後だったか、これは楽じゃないと思ったそうです。
 生徒上がりだから安くすむ、という仕事を出す方の計算もあるのでしょうね。それでも、どの業界にもある『未経験者不可』の壁を破るには、そんな仕事でも覚悟してやってみる必要もあるかもしれません。

インターネットの時代だけどローカルに

「地元の小さな印刷屋さん」「地元の役所や企業」など、地元にこだわるのは、およそインターネットの時代には似つかわしくないと思われるかもしれません。たしかに、インターネットの普及によって仕事のエリアは広がっています。私自身、一度も会ったことのない人や企業などから仕事をもらうことは、決して珍しくありません。
 しかし一方で、仕事を進めていく上で、顔が見える関係というのもまた重要なのです。実際に原稿をもらって入力してみると分かりますが、ここはどう処理したらいいんだろう?と思ったとき、自分の疑問点や原稿の状態を、正確に電話やメールで説明するのは実にむずかしいものです。
 クライアントにとってもまた、いくら電話で説明を受けても「うーん、そこは原稿を見てみないとわからないなあ」ということはよくあります。そのとき、入力者がすぐ自転車で出ていって、クライアントと一緒に原稿を見ながら検討できる、というのはお互いに安心感があります。

顔つき合わせて原稿を検討する

クライアントがどんな個所に慎重な態度をとり、どんな個所は「ああ、それはどっちでもいいよ」と答えるか。どんなとき「これはうちじゃ判断できないからお客さんに直接問い合わせてみよう」と答えるか。何をポイントに判断して入力者に指示しているか。クライアントと一緒に原稿を検討した経験が、実はどんなスクールや講座より、今後の役に立つのです。
 私は入力会社の内勤時代、毎日のように在宅さんと一緒に原稿を検討し、社内の誰かに相談したり、クライアントに電話して指示を仰いだりしていました。
 その数年間が土台になり、その上に今度は入力者として経験をいろいろ積んできたので、今はある程度自分の判断を信じることができるのです。最近は、私はほとんど質問というものをしません。

クライアントの手間を省く質問方法

普通だったら「○○の部分があるんですが、どうしたらいいでしょうか」「△△の部分があるんですが、どうしたらいいでしょうか」etcと質問するところに、「途中経過をご報告します」とメールを書いて、
・○○の部分はすべて××と判断して入力しております。
・△△の部分は不要とみなし、入力しておりません。
・◇◇の部分は□□で代用して入力しております。
「以上について変更のご指示等ありましたら、ご連絡いただけますと幸いです」という書き方をしているのです。
 こちらの判断が的確であれば、クライアントは何項目もの質問に答える必要がなく、単に「その調子で進めてください」のひとことで済みます。
 これはある程度経験が必要なので、誰にでもお勧めできる方法ではありませんが…(特に入力のツボを押さえていない新人さんの場合、こういうことをすると「勝手に判断するな!」とクライアントを怒らせることもあるので慎重に…)。

夏枯れの対策を立てなければ

 1995年当時、私がダイレクトメールを出したのは、結局印刷会社だけでした(当時は勇気も知識も足りなかった…)。次女出産後、T社の在宅入力者として振り出した1999年、また印刷会社にダイレクトメールを出したのですが、このときは枚数が少なかったせいか反響はありませんでした。
 けれども、T社の仕事量にはかなりムラがあることは、よく知っていました。特に梅雨時から秋口までは仕事が少なく、私はこれを「夏枯れ」と呼んでいました。その後知ったことは、ほとんどの会社で忙しいのは秋から年度末、そして新年度最初までだということです。
 T社が私にSOSを出してきた時期も1月半ばでしたし(第5号)、冬は寝る時間も取れないのに5月になるとパタッとヒマになる!という嘆きは、多くの人から聞くところです。ちなみに、私の現在のテープ起こしのメインのクライアントは、月刊誌の編集部が2つなので、仕事は比較的コンスタントです。
 1999年の春、私はT社の夏枯れ期にどう備えようかと頭を悩ませていました…。

 

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