私の仕事探し(連載第5回) ついに在宅入力者としてデビュー

なにしろ社内の人数が少なく、たかが私といえども貴重な戦力。2人目の子供が欲しいなら「妊娠許可願」を書くように、そう簡単にハンコは押さないよ、とよく冗談で言われた。けれども、妊娠した私に会社はいろいろ配慮してくれた。1998年8月にパートをやめ、11月に次女が生まれ、翌年1月半ばには早くも在宅入力の話がやってきた…。

「主人に相談いたしまして」の間にチャンスは逃げる

その後は幸いにも(?)在宅での仕事の話はなく、次の子の妊娠8カ月までT社で働きました。約2年4カ月のパート生活でした。
 やめるとき「この子が産まれて首がすわったら、ぜひ在宅で仕事をくださいね」と頼んでおいたら、ある日本当に「できますか?」と電話がかかってきたのです。
 赤ん坊はまだ生後2カ月半、首がすわっていないのでおぶって自転車に乗ることもできません。ちょっと早すぎる!というのが正直なところでした。
 おまけに1年で一番寒い季節でした。T社の仕事は、仕事の受け取り・納品には必ず出社です。自転車なら15分の距離ですが、バスだと遠回りになる上にバス停からT社まではかなり歩きますから、片道45分はみなければなりません。
 けれど「やります」と即答しました。私はこういうとき「主人に相談いたしまして」などとは答えません。会社はできるかできないか、直ちに返事が欲しいのです。できなければまた別の人に当たらなければならないのですから。
 仕事をしたい人は、日ごろから家族で十分話し合っておくべきだと思います。チャンスがあったらいつでもやるということが家族間で明確になっていなければ、結局チャンスを逃すことになります。
 会社は急にたくさん仕事が重なってしまって、猫の手も借りたい状況のようでした。赤ん坊がいては干されても仕方のないところ、仕事をくれるというのですから、「まだ無理です」などと断る私ではありません。

保育ママさんは働き者

かねて聞いていた保育ママさんに電話をして、出社する時に赤ん坊を預かってもらうことにしました。そのかたの自宅へは徒歩1分で、雨でも雪でも安心です。会社へは自転車で片道15分、仕事の説明に30分、計1時間預ける予定です。
 その方は自宅で子どもを預かる仕事をしていて、最低料金が1時間1500円です。乳児は多少割高になるらしいのですが、私は「ご近所だから」と最低料金にしてもらえました。
(ベビーシッターさんというのは、相手の家へ出かけて子どもをみる、つまり在宅ではない、というイメージなのですが、このへんの言葉の使い分けはどうなのでしょうか。)
 このかたは、最初のお子さんが赤ちゃんの頃に保育ママさんを始め、そのあと2人の子供が生まれ、いつも自分の子を育てながら他人の子の面倒も見てきたのです。
 今では一番下のお子さんも大学に入って家を離れましたが、そのかたは相変わらず、例えば1人をおんぶし1人をだっこし、さらにほかの子の保育園のお迎えに来たりしています。私はその姿を見るとつい、「これでこの1時間は4500円だな。いや、そのうち2人が乳児だから1時間で5500円ぐらいにはなってるかな」と他人事ながら計算してしまいます。
 大変な重労働のうえに安全に気を使う仕事、しかもその朝突然電話しても快く預かってくれるので、1時間5500円でも文句のつけようがありません。